数十年ぶりに漫画の単行本を買いました。『鬼滅の刃』作者吾峠呼世晴

 あれは僕が十歳くらいの時だった。ある日、自宅にいた僕は40℃の高熱が出た。体温計を見た六つ年上の姉は顔色が変わり、「なおが死ぬ」と取り乱していた。両親は仕事で不在だった。僕の家から自転車で20分くらいの所に診療所がある。そこまで姉は自転車の荷台に僕を乗せ、ふらふらしながら自転車を運転して連れて行ってくれた。たぶん二人乗りをしたことがなかったのだろう。

診療所に着くと、僕は待合室で、そこに置いてあった『少年チャンピオン』の「マカロニほうれん荘」を読みゲラゲラ笑っていた。それを見た姉は「こいつ、大丈夫だな」と思った、と後から聞いた。熱は翌日には下がった。

姉が僕のことを本気で心配してくれ、慣れない自転車の二人乗りで、僕を診療所まで連れて行ってくれたことを思い出すと、今でも目頭が熱くなる。

 そんな姉と今年の正月に久しぶりに実家で会いました。マンガ好きの姉に『鬼滅の刃』を読んだことがあるのか聞くと「感動したよ、泣ける」と教えてくれました。僕は『鬼滅の刃』のアニメを6話くらいまで見ていて、漫画を買うかどうか迷っていました。姉とは同じ環境で育ったせいもあるのか、姉が面白いというマンガはだいたい面白ので、買って18巻まで読みました。

 爆笑しました。主人公竈門炭治郎(かまど たんじろう)の成長、兄妹愛、友情、真実の言葉等に感動します。また鬼が人から鬼になり、日輪刀で斬られ、あの世にいくまでの回想場面にも感動します。ですが、第一の感想は「笑える」ということです。緊張と緩和の高低差が見事です。笑える場面は少ないのですが、笑いに爆発力があります。笑いの量は『マカロニほうれん荘』にかないませんが、笑いの爆発力はギャグマンガである『マカロニほうれん荘』に負けていません。いや~買ってよかったです。

 最後に短歌です。

 雪の夜に慈悲を捨てずに鬼を斬る
 からだに浴びる紅い温もり