記憶を超える愛

 

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『アンメット』第7話では、ミヤビ(演:杉咲花)が薬の量を増やしたことで、記憶力が少しずつ戻り始めます。しかし、その結果として脳内で「記憶錯誤」が発生し、記憶がすり替わる現象が起きます。これにより、仕事上のミスも増え始めます。この状況を目の当たりにした星前(演:千葉雄大)は、三瓶(演:若葉竜也)に薬を元の量に戻すべきかどうかを尋ねます。その後、二人の間で何度かやり取りがあり、最終的に三瓶が「記憶は仕事のためだけにあるわけではありません」と力強く言い放ちます。それに対して星前は「そうだね」と愛を込めて答えます。

 星前の「そうだね」は、100万語を費やして愛の素晴らしさを語るよりも、愛の素晴らしさを雄弁に語っています。

 僕は訪問介護の仕事をしており。認知症の方の介護もしています。認知症が進行すると、物事の事実関係は忘れてしまう一方、その時感じた感情は心に長く残っています。例えば、「失敗した事柄」は忘れてしまい、「怒鳴られた・怒られた」という感情だけが残ってしまいます。

 仕事上このような知識を学び、理解しています。ですから、認知症の方が、事実と異なることを言っても否定せず、不安を減らすような対応を心がけています。例えば、認知症の方の母親は亡くなっているのに、「お母さんが来るように言ったから、今から会いに行く」と言われた場合、「お母さんは亡くなっています」とは言わず、午後だった場合「そうですね、ただ今日は遅いので明日行きましょう。明日行く準備を一緒にしましょう。お母さんはどんな方だったんですか?」と言います。

 認知症の方のご家族で、このような対応ができる方もいらっしゃいます。認知症についての学びがなくても、言葉を超えた深い理解と共感によって、認知症の方の言葉を受け入れ、信頼関係を築いているのです。一言で言えば、「愛」です。

 ドラマに限らず、現実世界でも愛は記憶を超えますね。