『「歴史認識」とは何か』 大沼保昭著 聞き手江川紹子(中公新書) を読んで

『「歴史認識」とは何か』 大沼保昭著 聞き手江川紹子中公新書
を読んでの感想です。

 まず、この本の著者である大沼保昭のような方が日本にいらっしゃった(もうお亡くなりになっています)ということを嬉しく思いました。日本人がアジア諸国に対し犯してきた様々な過ちを直視し慰安婦の方々に寄り添われていました。

 中国や韓国に対しては以下のように書かれています。

 韓国や中国は、われわれに要求することを自分たちはできるのか。日本ばかり責めるけれど、、韓国にも慰安婦はいたではないか。ベトナム戦争のとき派兵された韓国軍はベトナムで一体どれほどひどことをやったんだ。中国は、南京大虐殺だと日本をさんざん非難するけれど、自分のところであれだけの人権弾圧をやっているではないか(略)欧米はあれだけ列強として植民地支配をやっておきながら、なぜ日本に説教を垂れるのか。(略)これは、素朴な、人としてごくあたりまえの不公平感だと思うのです。
 もちろん、他国が悪いことをやっているからといって、日本が悪いことをやっていい、ということにはならない。(略)日本もこれまでそれなりに過去の行為を反省してきたのだから、中国や韓国もすこしはそこをちゃんとみて、わが身を振り返りながら日本に接してほしい。

 韓国から「日本は過去の行為をこころから反省してない」という声も聞かれますが、それには事情がありました。

 日本がおこなった償いの理念と実際の活動がほとんど知られていないのは、(略)韓国の元慰安婦たちは、日本の償いを受け取れば「裏切り者」として支援団体とメディアから指弾され、韓国社会で生きていけなくなってしまう、といって内密に総理のお詫びの手紙、償い金、医療福祉金を受け取ることを強く希望しました。基金はその希望に従って償いを実施したのです。受け取った人たちの名前はもちろん、人数さえ2014年まで明らかにしなかったのは、そのためです。

 その時の総理の手紙が以下のものです

【元慰安婦の方々に対する内閣総理大臣の手紙・全文】
拝啓
 このたび、政府と国民が協力して進めている「女性のためのアジア平和国民基金」を通じ、元慰安婦の方々へのわが国の国民的な償いが行われるに際し、私の気持ちを表明させていただきます。
 いわゆる従軍慰安婦問題は当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳 を深く傷つけた問題でございました。私は、日本国の内閣総理大臣として改めて、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを申し上げます。
 我々は、過去の重みからも未来からの責任からも逃げるわけにはまいりません。わが国としては、道義的な責任を痛感しつつ、おわびと反省の気持ちを踏まえ、過去の歴史を直視し、正しくこれを後世に伝えるとともに、いわれなき暴力など女性の名誉と尊厳に関わる諸問題にも積極的に取り組んでいかなければならないと考えております。
 末筆ながら、皆様方のこれからの人生が安らかなもとのなりますよう、心からお祈りしております。
                             敬具

                      平成八(1996)年
                 日本国内閣総理大臣 橋本龍太郎

            (歴代著名:小渕恵三森喜朗小泉純一郎

 日本人は反省してきたと思います(そうでない方もいますが。)ただ、宣伝が下手だったためにそれが伝わらなかったかもしれません。永遠に頭を下げ続けるのは無理です。ですが、日本のために日本国内閣総理大臣は、元慰安婦の方々や元徴用工の方々に直接お会いして深く頭を下げていただきたい。それは必ず伝わります。韓国人も日本人も同じ人間です。安倍総理が行ってくださると、衝撃的かつ、効果的かつ、歴史的であります。ですが、お嫌であれば、次に総理になる方にお願いするしかありません。

 大韓民国朴槿恵大統領が失職し、文在寅大統領の政権に代わりました。すると日本と過去に交わしたいくつかの約束は反故にされました。現政権と何か約束しても、次の政権に反故にされるかもしれません。日本政府が疑心暗鬼になり、頑なな態度を取るのも理解できます。よくやられていると思います。僕がもし現在の大韓民国に対する日本の交渉担当者だったら、「おめぇらと話しをするだけ時間の無駄じゃ!」とブチ切れて「バン!!」とテーブルをひっくり返すかもしれません。

 ですが「日本国内閣総理大臣が頭を下げる写真」があれば、その写真に刻まれた真実は、大韓民国の政権が何度代わっても、無かったことにはできません。

 

※2019年12月29日に修正しました。